OzempicやZepboundなどのGLP-1薬で血圧は下がる?
試験では血圧がどのくらい、どれほど早く下がったのか。心拍数の増加、血圧が下がりすぎる場合、医師に伝えるための記録について解説します。
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GLP-1薬を使うと、血圧は平均で数mmHg下がります。Wegovy(セマグルチド)とZepbound(チルゼパチド、Mounjaroという販売名もあります)の主な減量試験では、収縮期血圧(上の血圧)が約6〜8 mmHg下がりました。有効成分を含まないプラセボでは、低下は約1 mmHgでした。Ozempicの成分であるセマグルチドの2型糖尿病の試験では、プラセボやほかの糖尿病薬に比べて約2 mmHg大きく下がりました。ここでの販売名と承認情報は米国のもので、Ozempic、Wegovy、Mounjaro、Zepboundはいずれも高血圧の治療薬としては承認されていません。一方、心拍数は1分あたり数回増える傾向があり、一部の人では血圧が下がりすぎることもあります。家庭での測定値は、ご自身の血圧の変化を医師に伝える手がかりになります。
GLP-1薬で血圧はどのくらい下がる?
GLP-1薬による収縮期血圧の低下は、平均で数mmHgです。この記事で扱うのは、セマグルチドとチルゼパチドです。米国では、セマグルチドは2型糖尿病向けにOzempic、体重管理向けにWegovyとして販売されています。チルゼパチドは、2型糖尿病向けがMounjaro、体重管理向けがZepboundです。チルゼパチドは、もう1つのホルモン受容体であるGIP受容体にも作用します。
以下は、米国処方情報と研究論文に記載された試験結果です。用量は試験で使われたものです。
| 薬剤 | 試験と対象者 | 収縮期血圧の変化 |
|---|---|---|
| Wegovy(セマグルチド)、週1回2.4 mg注射 | STEP 1、68週間。糖尿病のない肥満または過体重の成人(米国処方情報) | 6.2 mmHg低下。プラセボは1.1 mmHg低下 |
| Zepbound(チルゼパチド)、週1回5、10、15 mgのいずれかを注射 | SURMOUNT-1、72週間。2型糖尿病のない肥満または過体重の成人(米国処方情報) | 用量により6.6〜7.7 mmHg低下。プラセボは1.0 mmHg低下 |
| Zepbound(チルゼパチド)、週1回10、15 mgのいずれかを注射 | SURMOUNT-2、72週間。2型糖尿病があり、肥満または過体重の成人(同じ米国処方情報) | 用量により5.6〜7.1 mmHg低下。プラセボは1.2 mmHg低下 |
| セマグルチド(Ozempicを含む)、注射薬または内服薬 | 期間の異なる29試験。2型糖尿病の成人26,985人(Endocrine、2023年) | プラセボやほかの糖尿病薬より2.3 mmHg大きく低下 |
それぞれ異なる試験の結果なので、どの薬が血圧をより大きく下げるかは比較できません。減量試験では、医療機関への来院時に血圧を測定していました。試験開始時の平均収縮期血圧は約123〜131 mmHgでした。拡張期血圧(下の血圧)の変化はより小さく、STEP 1では2.8 mmHgの低下に対し、プラセボでは0.4 mmHgの低下でした。
SURMOUNT-1の一部として行われた小規模な試験では、2型糖尿病のない成人が、昼夜を通じて血圧を測る機器を装着しました。36週間後の24時間平均収縮期血圧は、チルゼパチドでプラセボより7.4〜10.6 mmHg大きく低下し、低下幅は用量によって異なりました。Hypertension誌の2024年の報告によると、昼間も夜間も低下がみられました。
GLP-1薬で血圧はどのくらい早く下がる?
チルゼパチド(米国での販売名はZepbound、Mounjaro)の減量試験SURMOUNT-1では、最初の約24週間、つまり約6か月にわたって血圧が速やかに下がり、その後は72週までほぼ一定でした。Heart誌の2024年の解析によると、収縮期血圧の低下の約3分の2(67.6%)は、体重減少によって説明できると推定されています。降圧薬を使っていた参加者は服用を続け、試験担当の医師が必要に応じて調整できることになっていました。
GLP-1薬で血圧が上がることはある?
試験の平均値では、GLP-1薬による血圧の上昇はみられませんでした。上がったのは心拍数で、多くの家庭用血圧計では「脈拍」と表示される数値です。Ozempic、Wegovy、Mounjaro、Zepboundの米国処方情報には、平均で1分あたり1〜4回の増加が報告されています。Wegovyの米国処方情報では、安静時の動悸や、心臓が速く打つ感じがあれば、医療従事者に伝えるよう案内しています。
薬の使用終了後に、血圧が再び上がることもあります。SURMOUNT-4では、まずZepboundを使った36週間で収縮期血圧が11.2 mmHg下がりました。その後プラセボに切り替えた人では、次の52週間で8.2 mmHg上がったのに対し、Zepboundを続けた人では2.0 mmHgの上昇でした(Zepbound米国処方情報)。
いつもより高い値が出たら、米国心臓協会(AHA)は、もう1度測り、両方の値を記録するよう勧めています。上の血圧が突然180を超える、または下の血圧が120を超える場合で、症状がなければ、少なくとも1分待って測り直すよう案内しています。どちらか一方でもその高さが続くなら、直ちに医療従事者に連絡してください。どちらか一方でもその高さがあり、胸痛、息切れ、背中の痛み、しびれ、脱力、見え方の変化、話しにくさを伴う場合は、待たずに救急へ連絡してください。
GLP-1薬で低血圧になることはある?
はい、一部の人では、GLP-1薬によって血圧が下がりすぎることがあります。Wegovyの減量試験では、成人の1.3%に低血圧が報告され、プラセボでは0.4%でした。Zepbound(チルゼパチド)では1.6%、プラセボでは0.1%でした。いずれも米国処方情報に記載された試験の数値です。両薬の処方情報とも、降圧薬を併用していた人で低血圧の報告が多かったとしています。Zepboundでは、降圧薬を使っていた人の2.2%に対し、使っていなかった人では1.2%でした。Zepboundの米国処方情報は、胃腸の副作用や脱水との関連も示しています。
嘔吐や下痢があるときは、英国の国民保健サービス(NHS)は十分な水分をとるよう勧めています。また、嘔吐が続いて水分をとっても吐いてしまう場合は、至急、医療機関に相談するよう案内しています。
米国内分泌学会の年次学術集会ENDO 2026で発表された研究は、すでに少なくとも2系統の降圧薬を使っていた成人42,262人の診療記録をさかのぼって調べた観察研究です。この集団では、低血圧に関連する症状などがあった人の割合が、GLP-1薬の開始前の8.7%から、開始後6か月間には10.2%に上がりました。集計には、めまい、失神、転倒、低血圧の診断、収縮期血圧90以下の測定値が含まれていました。こうした症状などは、65歳以上の人や2型糖尿病のある人で最も多くみられました。処方情報に載っている試験とは異なり、プラセボ群はなく、現時点では学会抄録のみの報告です。そのため、関連は示していても、薬が原因だと証明するものではありません。ノースウェスタン大学の報告では、この研究の上席著者も、さらなる研究が必要だと述べています。
NHSとAHAは、いずれも90/60未満を低い血圧としています。AHAは、症状やほかの問題がなければ、低い値が1回出ただけで通常は慌てる必要はないと説明しています。一方、めまい、吐き気、その他の症状がある場合は、医療従事者に連絡するよう勧めています。NHSが挙げる症状は、ふらつきやめまい、吐き気、かすみ目、全身の脱力感、混乱、失神です。失神しそうなときは、NHSは脚を上げて横になるか、それができなければ座って頭を膝の間に下げるよう案内しています。詳しくは、低血圧の数値についての記事をご覧ください。
めまいの原因が、必ずしも低血圧とは限りません。NHSのチルゼパチドとセマグルチドの解説では、めまいを起こすことがある副作用として低血糖も挙げています。ほかの糖尿病薬を併用している場合は、低血糖が起こりやすくなります。
GLP-1薬を使っている間、家庭では何を記録する?
測定するたびに、血圧と日付、時刻、心拍数を記録してください。測定の頻度は医療従事者に確認するよう、AHAは勧めています。測り方については、静かに5分間休み、1分間隔で2回測り、毎日同じ時刻に測定するよう案内しています。
数値と一緒に、診察だけでは医師に伝わらないこともメモしておきます。薬を使い始めた日や用量が変わった日、毎回の注射日、吐き気、嘔吐、下痢があった日、めまいの有無と起きた時刻などです。
降圧薬も使っている場合は、この記録が特に大切です。AHAは、測定値がどうであっても、医療従事者に相談せずに降圧薬の服用をやめないよう案内しています。どの薬についても、用量を変えるかどうかを判断するのは処方した医師です。家庭での測定値は、その判断に役立ちます。
血圧平均計算では、複数の測定値から平均を計算できます。紙で記録したい方には、メモ欄のある印刷できる血圧記録表もあります。BP Diaryなら、血圧と心拍数、メモを同じ記録に保存でき、前回の用量変更からの数週間など、選んだ期間の血圧レポートを無料で作れます。
どのようなときに医師へ相談する?
めまいを繰り返す場合は、医師に相談してください。NHSはめまいを低血圧の症状として挙げています。また、失神した場合は、その都度医師の診察を受けるよう勧めています。失神した人が呼吸をしていない、1分以内に呼びかけなどで目を覚まさない、完全には回復していない、話すことや体を動かすことが難しい場合は、直ちに救急へ連絡してください。胸痛や、心臓が強く打つ感じ、細かく震えるような動悸、脈の乱れといった症状がある場合も同様です。NHSは、運動中や横になっているときの失神も、緊急対応が必要な兆候として挙げています。受診時には記録を持参し、薬を使い始めてから何が変わったのかを医師に伝えましょう。